課題報告は、大会1日目(7月15日)の午後に開催予定です。下記の内容で準備を進めています。
○テーマ:「地域での支援」を考える
〇趣旨:
今回の課題報告では、社会的排除と包摂、地域共生社会という大きなテーマを想定しつつも、個別の多様なニーズをかかえる当事者への「地域での支援」に焦点を当てて、それぞれの当事者ごとの事例に基づき検討する。特に、(1)誰がどのように支援の対象とされるに至るのか、(2)専門職や行政職のほかに、地域社会内のどのようなアクターがその支援に関与しうるかという二つの軸を設定し、先進的な研究をなさっている論者からの報告をいただく。
三井さよ(『はじめてのケア論』)が指摘するように、そもそも誰にどのようなニーズがあり、誰が支援の対象とされるのか自体が自明のものではない。時代や政策とともに変化しうる。これまではっきりとした支援の対象にされず、偏見や差別的なまなざしを向けられてきた住民、さらに在宅療養の受け手のように「地域生活における一定のニーズがあるだろう」ことは推察されつつも個人化や高齢化、地域社会の構造の変化などを経て、そのニーズが変容しているような住民への支援において、地域社会という場が重要になってきている。
この現状において、行政職や専門職のほうも、そうした多様な住民への支援を模索する段階にある。つまり、地域でのさまざまな困難をかかえる人に対して、地域の専門職や行政のみならず、NPO団体、地域で暮らす一定層の住民、たとえば、民生委員、保護司、元看護師・保健師、元社会福祉士、当事者になってから/当事者だと自覚してから/当事者として活動してからの歴史が長い人物など、専門職的な視点や実践的な視点をもつ住民らが、それぞれ協働で、支援体制を構築することが必要になっている。
この課題報告では、地域の多様な住民をまきこんだ支援体制の現状や課題について議論したい。
第一報告では、在宅医療に関係する事例について、相澤出会員から報告いただく。在宅医療の受け手のニーズは、個人化や高齢化が進展する中で、家族単位から個人単位になりうる。在宅医療の現場で生じている支援の動向について、専門職や地域住民の関わりなどを報告いただく。
第二報告では、受刑者の社会復帰支援と地域コミュニティの役割について、刑事政策を専門にする高橋有紀先生から報告いただく。一般に「更生保護」と呼ばれる取り組みは、地域の民生委員や保護司の関わりが大きいものの担い手不足が深刻化している。原発の被災地でもある福島県の事情もふまえて、報告いただく。
第三報告では、しばしば地方での生きづらさが推察されるセクシャルマイノリテティーへの支援について、NPOの取り組み、東北地方という地域的な特徴に注目し、前川直哉先生と大森駿之介会員に報告いただく。ニーズが不可視化されやすい当事者への支援において、地域社会はどのような役割を担いうるか検討する。
報告者:
相澤出会員(東北医科薬科大学)
高橋有紀氏(福島大学)
前川直哉氏(福島大学)・大森駿之介会員(東北大学大学院)
コメンテーター:
庄司知恵子会員(岩手県立大学)
泉啓会員(岩手県立大学)
司会・コーディネーター:板倉有紀会員(福島大学)