2025年度の第71回東北社会学会大会を以下の日程・会場にて開催いたします。奮ってご参加下さいますようご案内いたします。
大会日程: 2025年7月19(土)・20日(日)
大会会場: 東北学院大学五橋キャンパス 〒984-8588 宮城県仙台市若林区清水小路3-1
後ほどご案内いたします。
課題報告は、大会1日目(7月19日)の午後に開催予定です。下記の内容で準備を進めています。
【テーマ】新自由主義への「イデオロギーの終焉」論的アプローチ
【趣旨】
今年度の課題報告は、三人の学説研究者の報告をもとに、我々社会学者が新自由主義といかに向き合っていくかを議論していこうという企画である。
ここ数十年、新自由主義――とりわけその正当化イデオロギーたる自己責任論――に対する批判が繰り返されてきた。新自由主義の弊害は、経済が停滞し格差が広がる中、一般にも徐々に認知されつつある。いまや首相(岸田前首相)までもが「新自由主義からの転換」を唱えるに至っている状況である。にもかかわらず、新自由主義イデオロギーの政策的表現たる富裕層優遇税制・緊縮財政・グローバル化推進等に、大きな変更はない。岸田政権の「転換」もかけ声だけに終わった。新自由主義はなおも健在である。
厳しい批判にもかかわらず生き続ける新自由主義の強さは、イデオロギーそのものの魅力にはないのかも知れない。イデオロギーではなく、例えば、我々の日常感覚に由来する単なる事実認識(事実誤認)が、政策転換を阻んでいるのかも知れない。そうであるとすれば、イデオロギーを批判したり、対抗イデオロギーを打ち出したりするばかりでは、新自由主義は揺るがない。以上のような見方は妥当なのか。新自由主義の強さの源は一体何なのか。それが、本企画の第一の論点である。
もうひとつ、新自由主義の延命に手を貸しているものとして、こんにちの「リベラル」のイデオロギーを挙げることができないであろうか。多くの人々が経済的苦境に喘いでいるにもかかわらず、奇妙なことに世界中の「リベラル」はこれに応えず、その結果、信頼を失墜している。アメリカ大統領選挙において“woke”な「セレブ」達が次々とハリスの応援演説に立つさまは、一般有権者から遊離した「リベラル」の姿を明瞭に示していた。「社会の分断」を嘆くリベラルが自ら分断を煽っているのではないか。リベラルの目を曇らせ、ネオリベラルの延命に手を貸しているのは、リベラル・イデオロギーではないか。これが本企画の第二の論点である。
本企画は、以上のような問題関心から、ダニエル・ベルの「イデオロギーの終焉」を借りて企画名とし、こうした問題に取り組んできた学説研究者三人に登壇していただくこととした。三人の研究対象は、いずれも、「資本主義-社会主義」、「保守-リベラル」といった二分法を越えて思想を紡ぎ続けた理論家達である。先人の知的営為から学び、新自由主義と対峙する際の糧としたいと考えている。
第一報告者の上田耕介会員は、民主制理論家ロバート・ダールの経済思想を研究されている。近年の財政政策をめぐる論争などを踏まえつつ、人々の事実誤認が新自由主義の(消極的)擁護につながっているという見方を示していただく。さらに、それと関わらせながら、ダールやチャールズ・リンドブロムの市場経済論について、その今日的意義を論じていただく。
第二報告者には、新進気鋭の学説・思想史研究者、池田直樹氏をお招きする。池田氏のピーター・L・バーガー研究はすでに高い評価を受けているが、現在の池田氏はさらに進んで、バーガーの議論の現代的な展開可能性を、R・N・ベラーらの議論との交差のうちに探っておられる。今回は、ベラーの個人主義論を検討しつつ、ポスト新自由主義社会の展望を論じていただく。
第三報告者の清水晋作会員は、ダニエル・ベルをはじめとするニューヨーク知識人について研究されている。今回は、ベルの「イデオロギーの終焉」論を振り返り、当時の論争から現在に有効な視点、また、新自由主義への対抗イデオロギーとしての性格をもつ「トランピズム」の解明につながる視点を、提示していただく。その際、ベルと同じくニューヨーク知識人であるリチャード・ホフスタッターの陰謀論分析を主に参照しながら論じていただく。
コメンテーターとして、山根純佳会員と仁平典宏氏にご登壇いただく。山根会員は、ジェンダー問題やケア労働の観点から新自由主義にアプローチされてきた。そのような現場からの実証的研究に基づき、福祉国家論や福祉多元主義と新自由主義との関連についても検討されている。仁平氏は、「新自由主義」概念を検討し、その日本社会での位置づけについて論じてこられた。加えて、NPOやボランティアの実証研究を通じて、ボランティアと新自由主義との(意図せざる)共鳴という問題を指摘し、その克服について検討されてきた。これらのご見識から、報告にコメントをいただきたいと考えている。
【報告者】
上田耕介会員(岩手保健医療大学)
池田直樹氏(神戸大学、非会員)
清水晋作会員(盛岡大学)
【コメンテーター】
山根純佳会員(実践女子大学)
仁平典宏氏(東京大学、非会員)
【司会】
小松丈晃会員(東北大学)
大井慈郎会員(東京都立大学)
前回の盛岡大会に続き、今回も託児サービスを用意いたします。
利用可能時間帯は、7月19日(土)12:00~17:30、7月20日(日)9:15~15:30、になります。利用料は無料です。大会が開催される建物内に託児場所を設け、専門の託児業者に託児担当を依頼します。
予約制とします。託児を希望する方は、託児サービス利用希望の旨とともに以下の情報を記したメールを、担当者のメールアドレスに送って下さい。〆切は、2025年6月14日(土)です。また、託児に関する問い合わせもメールで同じアドレスに送って下さい。
1)託児サービス申し込みのさいに必要な情報
・あなたの氏名
・あなたの所属
・託児サービスを利用する日および時間帯
・託児予定の子供の人数
・託児予定の子供の年齢
2)託児サービス申込先のアドレス(問い合わせ先アドレス)
sakuma@mail.tohoku-gakuin.ac.jp
第70回大会
2024年7月13日(土),14日(日)於・アイーナ・岩手県民情報交流センター
課題報告【テーマ】
社会調査データの保存・公開の現状と展望:再現性や研究倫理に関わる課題に着目して
【登壇者(登壇順)】
小杉亮子会員(埼玉大学)
三輪哲会員(立教大学)
平井太郎会員(弘前大学)
【コメンテーター】
山本薫子氏(東京都立大学)
朝岡誠氏(国立情報学研究所)
【司会・コーディネーター】
小川和孝会員(東北大学)
下瀬川陽会員(作新学院大学)
第69回大会
2023年7月15日(土),16日(日)於・東北大学川内南キャンパス
課題報告【テーマ】
「地域での支援」を考える
【登壇者(登壇順)】
相澤出会員(東北医科薬科大学)
高橋有紀氏(福島大学)
前川直哉氏(福島大学)・大森駿之介会員(東北大学大学院)
【コメンテーター】
庄司知恵子会員(岩手県立大学)
泉啓会員(岩手県立大学)
【司会・コーディネーター】
板倉有紀会員(福島大学)
第68回大会
2022年7月16日(土),17日(日)於・オンライン
課題報告【テーマ】
東北社会学会発・食と農の社会学を構想する
【登壇者(登壇順)】
谷口 吉光氏(秋田県立大学:非会員)
藤岡 真之会員(弘前学院大学)
山田 佳奈会員(岩手県立大学)
【コメンテーター】
藤本 穣彦会員(明治大学)
【司会】
本郷 正武会員(桃山学院大学)